書評「サイコロジー・オブ・マネー」モーガン・ハウセル著

皆様、こんにちは。にこいちです。コロナ禍がようやく収まってきて初めてのゴールデンウィーク、いかがお過ごしでしょうか?今日は、約1年半前に買って6度以上読み直しているお気に入りの本「サイコロジー・オブ・マネー」の書評を書きたいと思います。

 

1.著者について

著者のモーガン・ハウセル氏は米国・シアトル在住のベンチャーキャピタルのパートナー兼金融コラムニスト。医療業界で働く妻と2人の子供がいます。2008年に南カリフォルニア大学(University of Southern California)の経済学部(Economics)を卒業しました。著書「サイコロジー・オブ・マネー」が2020年秋に米国で発売されると全世界累計で70万部のベストセラーになり、日本でも10万部を突破しました。

モーガン氏の父は40歳のときに子供が3人いる状態で救命救急センターの医師になりました。しかし医師になって20年目で経済的な自立を果たすとあっさりと仕事を止めました。モーガン氏はこの事件に衝撃を受け、自らも経済的な自立を目標にすることにしました。

 

2.要約

 この本はコラム風にまとめられた20の章から構成されています。骨子をまとめると以下のとおりです。

・経済的な成果は知性よりも人間の心理(自制心)や行動といったソフトスキルに負うところが多い。足るを知り、市場から退場せずに投資を続け、裕福であり続けることが大切。

・大きなリターンを得ることよりも経済的に破綻しないことを目指し、計画を立てる際には「誤りの余地」(計画通りに進まない可能性。ベンジャミン・グレアムの「安全域」)を踏まえて計画を立てるべきである。例えば筆者は自らの投資において将来の利回りの予測を過去の平均値よりも3分の1ほど低く見積もっている。また、全資産(自自宅の価値を除く)の2割程度の現金比率を維持している。

・うまくいかないことがあっても問題ない。半分は間違っていても資産は増やせる。失敗にうまく対処するコツは、1~2回投資に失敗しても自信を失わずにプレイをし続けること。

・お金が人生にもたらす最大の価値は「自由」「思い通りの人生を送ること」。すなわち、お金があれば、好きなときに、好きな人と、好きなだけ、好きなことができる。

・金に物を言わせて高級品を買っても、本人が思っているほど他人からの尊敬や称賛は得られない。謙虚さや優しさ、共感力のほうが尊敬や称賛につながる。

・富を築くには「収入」より「貯蓄率」が重要で見栄を張らないことが大切。本当の富は目に見えない。「ウェルス」(富)と「リッチネス」(物質的豊かさ)は分けて考えるべきである。裕福さの誇示は、富を減らす一番の近道である。

・投資の神様は代償(ボラティリティや恐怖に対する忍耐力)を払わずにリターンを求めるものを嫌う。代償を罰金だと思わずに「入場料」と思うべきである。

・短期トレーダーと長期投資家によって目標は異なるので、投資家は自分の目標がぶれないよう時間軸や行動指針を紙に書きだすべきである。

・「目的のない貯金」ほど価値は高い。誰しも予想外の出費に迫られることがあるためだ。

・真の成功とは、ラットレースから抜け出して、心の平穏のために生きることである。

・筆者は個別株投資(バークシャーハサウェイやP&G株)から投資を始めたが、今では(個人年金を除き)低コストのバンガード社のインデックスファンドだけを保有するようになった。

 

3.感想

・自分の投資スタイルやお金に対する考え方に一番近く、大変共感できる本でした。インデックスの長期積立投資を勧める本であるにもかかわらず、インデックス投資界隈ではあまり話題に昇らない本だったので、今回取り上げてみることにしました。

・この本では、特に、お金があれば「好きなときに、好きな人と、好きなだけ、好きなことができる」というフレーズが気に入っています。言いたいことの核心を抽出して平易な言葉で言語化できるってすごい能力だなあと思います。

・要約のところでは省略しましたが、この本には米国の経済界の有名人の名前がいっぱい出てきます。例えば、この本で初めて名前を知ったラジャット・グプタ。グプタはインド生まれで10代で孤児になった苦労人ですが、大変優秀で、40代半ばでマッキンゼーのCEOに就任し、2008年には資産1億ドルに達していたのだとか。しかし、彼は資産10億ドル以上のビリオネアを目指して濡れ手に粟の一攫千金を狙いインサイダー取引を行ってしまい、逮捕・収監されました。既に名声を博し、莫大な富を持ったとしても、金、権力、名声に対する欲望を抑制できないと幸福は遠のいてしまいます。この本にはこのような欲望を抑制できなかった大金持ちがどのように資産や名声を失ったか、いくつも例が示されていて、勉強になりましたし、自分でも誰かに自分の考えを説明するときに使えそうなエピソードがいくつもありました。アメリカ人の作家さんはこういう具体例を示しながら自説の説得力を増すのが上手ですね。

・皆が大好きバフェット氏や盟友マンガー氏の言葉もちりばめられています。

・連休の合間に是非読んでみてください!特に、インデックス投資家の人にはお勧めします!