書評「マンガ お金は寝かせて増やしなさい」

皆様、こんにちは。にこいちです。

 

今日は、2021年12月16日(昨日)に発売された水瀬ケンイチさんの「マンガ お金は寝かせて増やしなさい」の書評を書こうと思います。ここで、2017年12月18日に発売された(漫画でない)「お金は寝かせて増やしなさい」のことを「原作」、今回発売されたマンガを「マンガ版」と略称します。

 

1.マンガ版は原作の漫画を入れ替え、ストーリーも大幅に変更したものである

 原作は全268頁でしたが、マンガ版は238頁とページ数が減りました。大きな構成の変化としては、原作は漫画が29頁に過ぎなかったのがマンガ版では82頁と、2.8倍に増えています。

 また、原作では2004年に商社マンと結婚した本田未来さんという若い女性が主人公で、投資の神様が未来さんにインデックス投資を教えるというストーリーでした。これに対し、漫画版では、都内の小さなIT企業に勤めるOL花沢ヒナさんが職場の新人社員幾月ミヤコさんからインデックス投資を習い、その中でアクティブ投資派の阿久津部長との競争に参加させられることになり・・・というストーリーになっています。

 原作の漫画は鐘崎裕太さんという漫画家さんが担当されていましたが、マンガ版ではシナリオ原作を鍋島焼太郎さん、作画を嬉野めぐみさんが担当されており、より漫画に力を入れて構成されたことが推測されます。

 漫画の絵柄は個人の好みによるところが大きいとは思いますが、マンガ版のほうが若い女性受けするきれいな絵柄になっていると思います。

 「マンガ」と銘打っているのだから、いっそのこと100%漫画にしてしまえばよかったのではないか?とも思いますが、何らかの事情で難しかったのでしょうか。「漫画 バビロン大富豪の教え」くらい振り切ってほぼ漫画オンリーにしてもよかったのではないか、と感じました。

 

2.マンガ版では「涙と苦労のインデックス投資家20年実践記」が4頁のコラムとなっている

 原作では「涙と苦労のインデックス投資家15年実践記」は1章全部、36頁にわたって書かれていたのに対し、マンガ版では第6章「プロは絶対に教えてくれない『インデックス投資を続けるコツ』」の最後のコラム4頁となっています。

 コラム中の折れ線グラフでは、水瀬さんの資産が大台に乗ったことが明らかにされています。

 個人的には、2017年以降の実践記も楽しみにしていたため、拍子抜けでした。その年その年の新聞記事などと一緒に書かれていた原作の実践記は、当時どのような社会状況だったのか、その中でどう水瀬さんが感じたり考えたりして投資をされていたかが迫真性をもって書かれていて、とても好きだったのです。なので、もし「お金は寝かせて」の次回作があるとしたら、ここは追加して頂きたいなあと思います。

 

3.インデックス投資を勧める際の最初の1冊であることは間違いない

 マンガ版のあとがきで、水瀬さんは「(原作の)対象読者像として想定していた20~30代の若者世代はあまり本を読まないいわゆる『活字離れ」が進んでいる」「どんなに入魂の本を書いても彼らには届かない」という苦悩を明らかにされています。そのため、出版社に漫画化を提案し続けられ、漸く実現したのがこの漫画版とのことです。

 私は、ここ数年、水瀬さんの原作を家族や友人、近所の若者など金融リテラシーのあやしい人に送って読むよう勧めてきましたが、そもそもお金の話を活字で読むこと自体にアレルギーを持つ方は多かったです。水瀬さんの原作を第一に勧めていたのは、分かりやすく実践的であることはもちろん、漫画が含まれているので初心者にも親しみが持ちやすいと思ったからなのですが、それでもハードルは結構高かったみたいです。

 例えば、5・6年前に蓄財に興味を持ったある高学歴の中高年の男性から「お金に関する面白い本はない?」と言われて、水瀬さんの原作はもちろん、「ウォール街のランダム・ウォーカー」や「敗者のゲーム」を渡したりしたのですが、彼は一向に読んだ節がありませんでした。なのに「漫画 バビロン大富豪の教え」だけは読んでくれたようなのです。

 中高年でそうなのですから、20代・30代に活字の本を読んでもらうことはもっと難しいのでしょう。ご苦労をお察しいたします。マンガ版「お金は寝かせて増やしなさい」がより若い世代に広まるといいですね。

 私も、これから「お金を寝かせて」を誰かにお渡しする機会があるなら、マンガ版のほうにしようと思います。

 それでは、また。