年金問題についてーその1 公的年金=保険とはどういうことか? 

皆様、こんにちは、にこいちです。

 

ここ最近ずっと考えている年金問題についてシリーズで書いてみようと思います。今日は、公的年金=保険の意味について考えてみます。

 

1.年金の定義

 「年金」とは、終身または一定期間にわたり、毎年定期的に一定の金額を給付する制度のもとで、支給される金銭。また、老齢・障害・死亡などを保険事故とし、被保険者や遺族の生活保障を目的とする年金保険制度のこと。国民年金・厚生年金・共済年金などの公的年金と、企業年金・団体年金、個人年金などの私的年金とがある(小学館デジタル大辞泉)。

 「保険」とは、火災・死亡など偶然に発生する事故によって生じる経済的不安に備えて、多数の者が掛け金を出し合い、それを資金として事故に遭遇した者に一定金額を給付する制度。生命保険・損害保険など。(小学館デジタル大辞泉

 公的年金は「年金」でありながら「保険」でもあるらしい(後述します)。でも、そんなこと辞書には書いてなくて、正直分かりにくいです。

 

2.法律上の根拠

 すべて公の制度には、法律上の根拠があります。公的年金の根拠条文は、憲法25条2項及び国民年金法、厚生年金保険法など。

 憲法は25条1項で生存権を定めていて、2項で国の努力目標を定めています。

第二十五条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
② 国は、すべての生活部面について、社会福祉社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

 この25条2項に基づき、国民年金法(昭和34年)が定められています。国民年金は「老齢、障害又は死亡によつて国民生活の安定がそこなわれることを国民の共同連帯によつて防止し、もつて健全な国民生活の維持及び向上に寄与することを目的」とし(1条)、「国民の老齢、障害又は死亡に関して必要な給付を行う」ものとされています(2条)。

 厚生年金保険法(昭和17年法を29年に改正)は憲法より先に定められたためか、生存権規定との関係性が明らかではありませんが、厚生年金保険法が新憲法制定後も存続している以上、憲法25条と整合性のある制度と捉えられているのでしょう。

 

3.さて、最近読んだ本によれば、”国民年金も厚生年金も「保険」なので、民間の貯蓄性金融商品とは異なる性質のものである”(権丈善一箸「ちょっと気になる社会保障V3」iii頁、田村正之箸「人生100年時代の年金戦略」27頁も同趣旨)とのこと。

 要するに、公的年金は、自動車保険などと同様「掛け捨て保険」の性質を持つので「支払損もありうる」制度であることを理解せよ!ということらしい。国民年金法等法律の中で支払うお金のことを「保険料」と読んでいるんだから、保険としての性質は明らかでしょう?ということらしいです。

 でもね、これめっちゃ分かりにくいですよね!民間の「保険」は貯蓄性の保険もあるわけで掛け捨てとは限らないし。公的年金が掛け捨て保険なら、もっとはっきり説明してほしい!民間の保険は保険法で契約のときに重要事項についての説明責任があるのに、公的年金はそんな説明責任もないです。

 それでいながら、国民年金は20歳以上60歳未満の全国民に加入義務があり、支払が遅延すると年14.6%の延滞金がついたり(97条)、財産が差し押さえられたりします(109条の7)。厚生年金も同様に延滞金の規定(87条)や差押の規定があります(100条の7)。これらは、財産が競売にかけられると税金と同じく優先して支払われることになっています。

 

4.要するに、年金支払い義務は国民の三大義務の一つである納税と同じ位重い義務なのに、年金加入前の事前説明・教育があまりないのが問題。もっと中学校・高校できちんと教えてほしかった、と思いました。

 

5.さて、公的年金は掛け捨て保険(=支払った保険料が戻らない)とはどういう意味でしょうか?どういう場合に掛け捨てになるか、思いつく限りで書いてみます。

(1)老齢年金の加入期間が10年未満の場合

10年未満しか年金に加入していないと老齢年金をもらえず、支払った分が掛け捨てとなります。なお、仮に1回も年金を支払っていなくても、税金で間接的に年金保険料を支払っていますので、掛け捨てとなっています。

あと、支払義務があるのに支払わないと延滞金が加算されることになります。延滞金が嵩むと老齢年金の受取額が減って、結局支払い損になるということはあるかもしれません。

なお、公的年金障害年金や遺族年金の性質もあり、若くして障害を負ったり死亡した場合に年金が出ます。若くして障害を負ったり死亡を負う人は人数としては少ないので、多くの人の場合掛け捨てになります。

(2)早死にした場合

例えば、年間20万円の年金を40年支払い(総額800万円)、月額5万円の受給資格を得たのに1年(受取総額60万円)で亡くなってしまった場合は、多くが掛け捨てとなります。死亡一時金はありますがあまり高い金額ではありません(最高で32万円)。

(3)年金を支払っているのに記録に反映されていない場合:

「失われた年金記録」の話です。支払い額の全部又は一部が反映されないまま年金を受け取ることとなり、場合によっては受給資格を満たさず無年金となってしまうと思われます。

(4)ハイパーインフレとなった場合

例えば、年間20万円の年金を40年支払い(総額800万円)、月額5万円の受給資格を得て40年間年金を受け取ったが(総額2400万円)、途中ハイパーインフレが起きて従来の100分の1しか価値がなくなった場合(且つマクロ経済スライドがうまく機能しない場合)。

支払金額以上の金額は名目上戻っているので掛け捨ての定義には当てはまらないかもしれませんが、支払った年金保険料がほぼ戻らないという意味で掛け捨て的な結果になると思いました。

 

以上、長くなりそうなのでここでいったん切ります。

それでは、また!