愛読書「となりの億万長者」その3-著者の紹介

皆様、こんにちは。にこいちです。

 

前回の記事を書いた後、インデックス投資ブロガーとして有名な水瀬ケンイチさんより、スタンリー博士の逝去についてコメントを頂きました。そういえば「となりの億万長者」の著者について詳しく紹介する(日本語の)記事や動画は見たことがなく、自分でも調べてみたいと思いました。そこで、今日は、英語のWikipediaや英語の記事等をまとめて「となりの億万長者」の著者二人を紹介し、そこで感じたことを書きたいと思います。

 

1.スタンリー博士(Dr. Thomas J. Stanley)の紹介

スタンリー博士は、1944年(昭和19年)にニューヨーク州ブロンクスで生まれました。父は地下鉄の運転手、母は主婦、秘書。

 

コネチカット州の大学を卒業、テネシー大学の修士課程を卒業した後、ジョージア大学で経営学の博士号を取得。アトランタジョージア州立大学で勤務、その後ニューヨーク州立大学オールバニ校で教鞭をとりました。また、テネシー大学、ジョージア大学、ジョージア州立大学でマーケティングを教えました。

 

1980年にアメリカの大手銀行からアメリカの億万長者に関する全国調査を依頼され、その際「となりの億万長者」につながるアイデアを得ます。

 

1988年に「Markething to the Affuluent」(富豪へのマーケティング、日本訳なし)、1991年に「Selling to the Affluent」(富豪への販売、日本訳なし)、1993年に「Networking with the Affuluent」(富豪とのネットワーキング、日本訳なし)、1996年にダンコ博士と共著で「The Millionaire Next Door」(となりの億万長者)、2000年に「The Millionaire Mind」(1億円貯める方法をお金持ち1371人に聞きました)、2004年に「Millionaire Woman Next Door」、2009年に「Stop Acting Rich」を発行し、2010年に「The Millionaire Next Door」(となりの億万長者)の改訂版を発行しました。また、40本の論文を書き、20回テレビ出演もしました(有名なオプラウィンフリーの番組にも出演)。

 

時期は不明ですが途中で大学を辞め、2013年から2015年には、データポイントという調査・研究会社で調査・研究の業務に従事されていました。2015年2月28日にジョージア州アトランタで車を運転中、飲酒運転の車に衝突されて轢かれて亡くなりました。

 

2.ダンコ博士(Dr. William D. Danko)の紹介

ダンコ博士の生年は不明・生い立ちは不明です。たしかスタンリー博士の5、6歳年下だったと思います(ご存知の方がいらしたら教えて頂けると助かります)。

 

ダンコ博士の専門は、消費者行動、特に富の形成に関する研究です。ニューヨーク州立大学オールバニ校にて教師のスタンリー博士と出会い、1973年に初めてスタンリー博士の富豪に関する研究を手伝うことになりました。その後、20年以上研究や論文作成を共にしました。この間、ダンコ博士は1983年ニューヨーク州のレンセラー工科大学ラリー経営大学院にて博士号を取得。また、スタンリー博士はジョージア州に移りましたが、ダンコ博士はオールバニ校に残りました。

 

1993年にスタンリー博士は新しい研究にダンコ博士を呼び、その成果が1996年の「となりの億万長者」となりました。このころ、ダンコ博士は四肢麻痺の弟トニーさんの介護をすることになり、大変な日々を送られたようです。

 

ダンコ博士はオールバニ校のマーケティング学部に31年間在籍し、そのうち9年間は学部長を務め、2007年に同校のビジネススクールの名誉教授に就任しました。

 

2017年、同僚のリチャード・ヴァン・ネス氏と共著「Richer Than A Millionaire: A Pathway to True Prosperity」(億万長者より豊かに:真の豊かさへの道のり、日本語訳なし)を発行されています。この本は、特に若い人に向けて、パーソナルファイナンスの重要性を説いたもののようです。また、この本を書くに当たって影響を受けたのは、アメリカの初代大統領兼発明家のベンジャミン・フランクリンとのことです。

 

フランクリンは自らの信念を13の項目(節制、沈黙、規律、決断、節約、勤勉、誠実、正義、中庸、清潔、平静、純潔、謙譲)にまとめ、毎週1週間を1つの項目に割り当てて遂行し、年に4回この過程を繰り返して身に着けようとしたと言われています。フランクリンのこの13項目は、大富豪ウォーレン・バフェットの価値観「人は習慣で行動するので、正しい思考とふるまいを早いうちに習慣化させるべきだ」(注:桑原晃弥箸「ウォーレンバフェット成功の名語録」84頁より引用)にも影響を与えています。

 

breakwaterfinancial.com

 

3.感想

 スタンリー博士もダンコ博士も生まれながらのスーパーエリートではない「となりの億万長者」と呼ぶのにふさわしい人たち、だからこそ著書が広い共感を得られたのではないかと思いました。

 

 たとえば、スタンリー博士のお父さんは地下鉄の運転手であり、労働者階級のご家庭で育っています。スタンリー博士が修士課程を卒業されたテネシー大学(州立)の2021年の大学ランキングは112位/1452校、博士号を取られたジョージア大学(州立)は47位/1452校。(US News 2021 Best National University Rankings)

www.usnews.com

 

 住んでいらしたのも、高級住宅地ではありません。子供時代を過ごされたニューヨーク州ブロンクス区は比較的都会ですが、その後に移り住んだテネシー州アメリカ地図の右から3分の1位の内陸の州。ジョージア州テネシー州の右斜め下(フロリダ州の上)の内陸の州。ニューヨーク州オルバニー郡も、マンハッタンから220km離れた人口10万人弱の都市です。

 

 

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アメリカ合衆国地図

 また、ダンコ博士が卒業され教鞭を取られたニューヨーク州立大学オールバニ校のランキングは160位/1452校、ニューヨーク州にあるレンセラー工科大学(私立)は53位/1452校です。

 

 例えていうなら、”スタンリー博士は東京都北区に生まれて、埼玉大学を卒業し、宮崎大学修士課程を終え、九州大学で博士号を取り、その後に東京都立大学(東京都日野市)で教鞭を取っているときに同大学の学生だったダンコ博士に会い、二人は日野市で一緒に働いていましたが、途中でスタンリー博士は福岡市に引越し、九州大学で教鞭をとりました”みたいなイメージです(注:私の勝手なイメージなので責任は持てません)。

 

 お二人とも優秀ではあるけど、超エリート、生まれながらのサラブレッドかというとそうではなく、質実剛健、真面目な学校の先生というイメージ。住んでいる場所も地味で、ご家庭、特にお子さんやお孫さんを非常に大切にされている/たようです。

 

 また、「となりの億万長者」がヒットしたのは、スタンリー博士が52歳、ダンコ博士が40代半ばのとき。お二人はこの著書がきっかけで億万長者になられたようですが、決して早い成功ではありません。20年以上にわたりお二人でコツコツと地道な調査・研究を続け、その調査・研究の結果を凝縮して骨格を取り出して読み易くまとめあげたのが「となりの億万長者」という大ベストセラーなのです。

 

 著者について知ると、本を読むのも楽しくなりますよね。私はこういう本の書かれた背景や理由を調べるのが大好きです。

 

 では、また!

 

追記:新聞報道によると、スタンリー博士は、車好きでオプション満載のアキュラ(ホンダの高級モデル)に乗っていたことがあるのみならず、死亡時には2013年製のコルベット(高級車)に乗っていたとのことです。また、ダンコ博士も新車及び中古車でベンツを買ったことがあるようです。ニューヨークタイムズの記者は”彼らも人の子で上質な物を味わわずにはいられなかった”というようなことを皮肉っぽく述べています。博士たちも人の子で倹約だけの人生ではなかったのだなあとちょっと苦笑です。
www.nytimes.com